【図解でわかる】粗粒率の計算方法とコンクリート品質への影響|JIS規格と実務のポイント

  

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コンクリートの品質を左右する「粗粒率」という言葉を聞いたことはありますか?現場でコンクリートを扱うプロフェッショナルであれば、この数字の重要性は肌で感じているかもしれません。しかし、「具体的な粗粒率の計算方法が曖昧」「算出はできるけど、その意味を深く理解しているか不安」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

コンクリートの「良し悪し」は、配合設計に大きく依存し、その中でも骨材(砂や砂利)の粒度分布は、ワーカビリティ、強度、耐久性といった性能に直接影響を与えます。そして、この粒度分布をたった一つの数字で客観的に評価できるのが「粗粒率」なのです。

この記事では、コンクリートの品質を安定させ、施工トラブルを防ぐために不可欠な粗粒率について、その意味から具体的な計算方法、さらにはJIS規格に基づいた評価基準と実務での活用術まで、ステップバイステップで徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたは粗粒率を深く理解し、自信を持ってコンクリートの配合設計や品質管理に臨めるようになるでしょう。さあ、一緒にコンクリートの真髄、「粒」のバランスを解き明かしていきましょう。


粗粒率とは?コンクリート品質を左右する「粒のバランス」の重要性

コンクリートは、セメント、水、そして骨材(砂や砂利)を混ぜ合わせて作られます。この骨材は、コンクリート全体の約70〜80%を占める最も大きな体積要素であり、その品質がコンクリートの性能を決定づけると言っても過言ではありません。粗粒率(Finenss Modulus, FM)とは、この骨材、特に細骨材(砂)の粒度分布(粒の大きさのバラつき具合)を単一の数値で表す指標です。まるでオーケストラのハーモニーを整える「調律の指標」のように、骨材の粒のバランスが良い状態を示すことで、密実で高品質なコンクリートを生み出すための道しるべとなります。

なぜ粗粒率が重要なのか?

骨材の粒度分布は非常に複雑な情報であり、異なる骨材同士を比較したり、品質を継続的に管理したりする際に、粒度曲線全体を毎回詳細に分析するのは非効率です。そこで、粗粒率という一つの数値を用いることで、この複雑な情報を簡潔に表現し、骨材の品質を迅速に評価・比較することが可能になります。特に、細骨材はセメントペーストと骨材の界面形成に大きく関わるため、その粒度分布がコンクリートのワーカビリティ(施工しやすさ)や強度、耐久性に決定的な影響を与えるのです。

粒度分布が悪いとどうなる?

骨材の粒度分布が悪い、つまり粗粒率が適切でない場合、コンクリートには様々な問題が発生します。

  • ワーカビリティの低下: 細骨材が細かすぎると、骨材の総表面積が増大し、セメントペーストが骨材を覆うために多くの水が必要になります。これにより単位水量が増加し、水セメント比が高まるため、コンクリートの強度低下や乾燥収縮の増大を招きます。逆に、細骨材が粗すぎたり、特定の粒径の骨材が欠けていたりすると、骨材同士の間に大きな隙間ができやすくなり、分離(材料が不均一になる現象)やジャンカ(コンクリート打設時に骨材が偏り、空隙ができてしまう現象)の原因となります。これらはコンクリートの密実性を損ない、強度や耐久性を低下させます。
  • 強度の低下: 水セメント比の増加は、硬化したコンクリートの圧縮強度に直接的な悪影響を与えます。
  • 耐久性の低下: 分離やジャンカは、コンクリート内部に空隙を作り出し、そこから水や劣化因子が侵入しやすくなります。これにより中性化や塩害が進行しやすくなり、構造物の寿命が短くなる原因となります。

これらの問題を防ぎ、高品質で長寿命なコンクリート構造物を実現するためには、粗粒率を適切に管理し、骨材の粒のバランスを最適化することが不可欠なのです。


粗粒率の計算方法:JIS準拠のステップバイステップ解説

それでは、いよいよ粗粒率の計算方法について具体的に見ていきましょう。粗粒率を算出するためには、まず骨材の「ふるい分け試験」を行い、その結果として得られるデータを活用します。ここでは、JIS規格に基づいた方法を詳しく解説していきます。

まずは「ふるい分け試験」から

粗粒率の計算の第一歩は、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」に則ったふるい分け試験です。これは、乾燥させた骨材を粒径の異なるふるいのセットにかけ、それぞれのふるいに残った骨材の質量を測定する試験です。

試験に必要なもの
  • ふるい: JIS A 1102で規定されている標準ふるいのセットを使用します。細骨材の場合は、主に10mm、5mm、2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、0.15mm(JISでは「呼び寸法」で表示されます)の7種類のふるいが用いられます。
  • ふるい振とう機: ふるいを効率的に振とうさせ、骨材を粒径に応じて分離させるための機械です。
  • 電子天びん: 各ふるいに残った骨材の質量を正確に測定するために使用します。
  • 乾燥炉: 試験前に骨材を完全に乾燥させるために使用します。
  • 試料: 均質な骨材の代表試料。細骨材であれば、通常500g程度が用いられます。
試験手順の概要
  1. 試料の準備: 採取した細骨材試料を乾燥炉で定質量になるまで乾燥させます(通常105±5℃)。その後、室温まで冷却し、正確に質量を測定します(M0グラムとする)。
  2. ふるい分け: 乾燥・冷却した試料を、ふるい目の大きいものから小さいものへと順に重ねたふるいのセット(一番下には受け皿を設置)の一番上に投入します。
  3. 振とう: ふるい振とう機にセットし、JISで定められた時間(通常は10分間程度)振とうします。
  4. 質量測定: 振とう後、各ふるいの上に残った骨材の質量(M10mm、M5mmなど)を個別に正確に測定します。受け皿に残った最も細かい骨材の質量も測定します。各ふるいの残量と受け皿に残った量の合計が、当初の試料質量M0とほぼ一致することを確認します(誤差は通常0.5%以内が許容範囲)。

計算式の理解と具体的な算出方法

ふるい分け試験で得られたデータをもとに、粗粒率を算出します。

各ふるい目の「残留百分率」を出す

まず、各ふるいの上に残留した骨材の質量を、元の試料全体の質量で割り、百分率で表します。

残留百分率 (%) = (各ふるい上に残った骨材の質量 / 元の試料全体の質量) × 100

例えば、試料500gのうち、2.5mmふるいの上に50g残った場合、2.5mmふるい上の残留百分率は (50g / 500g) × 100 = 10% となります。

次に、各ふるい目の「ふるい上の累積残留百分率」を算出します。これは、そのふるい目、およびそれよりも大きいふるい目に残った骨材の全百分率の合計です。

累積残留百分率の合計から粗粒率を算出

粗粒率を算出するために用いられる標準ふるい目は、JIS規格で以下の7種類が定められています。

  1. 10mm
  2. 5mm
  3. 2.5mm
  4. 1.2mm
  5. 0.6mm
  6. 0.3mm
  7. 0.15mm

これらの7種類のふるい、それぞれの「ふるい上の累積残留百分率」を全て合計し、その値を100で割ることで粗粒率が求められます。

粗粒率(FM) = ( Σ 各ふるい上の累積残留百分率 ) / 100 (Σ は上記の7つのふるい目についての合計を意味します)

【実践例】具体例で計算方法をマスターしよう

架空の細骨材試料500gのふるい分け試験結果を例に、実際に粗粒率の計算方法を見ていきましょう。

| ふるい目 | 各ふるい上に残った質量 (g) | 残留百分率 (%) | 累積残留質量 (g) | 累積残留百分率 (%) | | :——- | :————————– | :————- | :————— | :—————– | | 10mm | 0 | 0.0 | 0 | 0.0 | | 5mm | 15 | 3.0 | 15 | 3.0 | | 2.5mm | 70 | 14.0 | 85 | 17.0 | | 1.2mm | 120 | 24.0 | 205 | 41.0 | | 0.6mm | 150 | 30.0 | 355 | 71.0 | | 0.3mm | 100 | 20.0 | 455 | 91.0 | | 0.15mm | 35 | 7.0 | 490 | 98.0 | | 受け皿 | 10 | 2.0 | 500 | 100.0 | | 合計 | 500 | 100.0 | | 321.0 |

計算ステップ:

  1. 各ふるい上に残った質量を測定し、表に記入します。
  2. 残留百分率を計算します。(例: 5mmふるい: (15g/500g)×100 = 3.0%)
  3. 累積残留質量を計算します。(例: 2.5mmふるい: 0g (10mm) + 15g (5mm) + 70g (2.5mm) = 85g)
  4. 累積残留百分率を計算します。(例: 2.5mmふるい: (85g/500g)×100 = 17.0%) 注: 各ふるい上の累積残留百分率は、そのふるい目より大きなふるいに残った分の百分率と、そのふるい目に残った分の百分率を合計したものになります。上記の表では、すでにそのように計算されています。
  5. 7種類の標準ふるい目(10mm~0.15mm)の累積残留百分率を合計します。 合計 = 0.0 + 3.0 + 17.0 + 41.0 + 71.0 + 91.0 + 98.0 = 321.0
  6. 合計値を100で割ります。 粗粒率(FM) = 321.0 / 100 = 3.21

この計算例により、この細骨材の粗粒率は3.21であると求められました。この数字が何を意味するのかは、次の章で詳しく解説します。


算出された粗粒率の評価とコンクリート配合設計への活用

粗粒率が算出できたとしても、その数値が「良い」のか「悪い」のかを判断できなければ意味がありません。ここでは、算出した粗粒率の評価基準と、コンクリート配合設計における活用方法について解説します。

適切な粗粒率の範囲とは?JIS規格と実務での目安

粗粒率は、その値が高いほど骨材が「粗い(大きい粒が多い)」ことを示し、低いほど「細かい(小さい粒が多い)」ことを示します。日本のJIS規格では、コンクリート用骨材の粗粒率について、以下のような目安が示されています。

  • JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂): 細骨材(砂)の粗粒率については、使用目的に応じた適切な範囲が規定されています。一般的に、普通コンクリート用細骨材の粗粒率は2.5~3.0程度が望ましいとされています。
  • JIS A 5308(レディーミクストコンクリート): レディーミクストコンクリートの品質基準の中でも、細骨材の粗粒率が間接的に重要視されます。

この範囲はあくまで目安であり、コンクリートの種類(普通、高強度、軽量など)、使用する混和剤の種類、練り混ぜ方法、施工方法(ポンプ圧送の有無など)によって最適な粗粒率は変動します。現場の経験値や過去の良好な実績値との比較も非常に重要になります。

粗粒率が示す骨材の特性と品質への影響

粗粒率の数値を見ることで、使用する骨材がどのような特性を持っているのか、そしてそれがコンクリートの品質にどう影響するかを予測できます。

粗粒率が高い(粗い)場合の影響

粗粒率が高い細骨材は、全体的に大きな粒子の割合が多いことを示します。

  • メリット: 骨材の表面積が少なくなるため、セメントペーストの消費量を抑えられ、単位水量を減らすことが可能です。これは、水セメント比の低減につながり、コンクリートの強度向上や乾燥収縮の抑制に寄与します。
  • デメリット: 細粒分が不足するため、コンクリートのワーカビリティが低下し、分離しやすくなる可能性があります。特にポンプ圧送を行う場合や、複雑な型枠に打設する際には、ジャンカや空隙の発生リスクが高まります。
粗粒率が低い(細かい)場合の影響

粗粒率が低い細骨材は、全体的に小さな粒子の割合が多いことを示します。

  • メリット: 細粒分が多いため、コンクリートに粘り気を与え、ワーカビリティが向上しやすくなります。特に、ポンプ送給性に優れる傾向があります。
  • デメリット: 骨材の総表面積が増えるため、セメントペーストで覆うために多くの水とセメントが必要になります。結果として単位水量が増加し、水セメント比が高まり、コンクリートの強度低下や乾燥収縮の増大につながります。また、セメント量が増えることでコスト増加やCO2排出量の増加も懸念されます。

粗粒率を最適化する配合調整のポイント

粗粒率の評価に基づき、コンクリートの配合設計を最適化することで、品質の安定化、経済性の向上、施工トラブルの防止が期待できます。

  1. 複数の骨材のブレンド: 単一の骨材源から供給される材料が理想的な粗粒率ではない場合、粒度分布の異なる複数の骨材(例えば、粗い砂と細かい砂)を混ぜ合わせることで、目的の粗粒率に調整することが可能です。これは、まるで料理のレシピのように、異なる材料を適切な比率で配合することで、最高の味(コンクリート性能)を引き出す技術です。
  2. 高性能化学混和剤の活用: 近年、高性能AE減水剤などの化学混和剤の進化は目覚ましく、骨材の粒度分布の許容範囲を広げる役割も果たしています。粗粒率がやや外れていても、適切な混和剤を用いることで、必要なワーカビリティや強度を確保できる場合があります。これにより、骨材調達の選択肢が広がり、コスト削減にもつながることがあります。
  3. 水セメント比の調整: 粗粒率が低い(細かい)骨材を使用する場合、単位水量の増加を防ぐために、水セメント比を再検討し、必要な強度を確保するためのセメント量と水の量を調整することが重要です。
  4. 試験練りによる確認: 机上での計算だけでなく、実際に試験練りを行い、コンクリートのワーカビリティ(スランプや空気量など)を測定し、目視で分離抵抗性や締固め性を確認することが不可欠です。これにより、理論値と実測値のずれを修正し、最適な配合設計を追求します。

粗粒率は、コンクリートの配合設計者や品質管理技術者にとって、骨材の品質を見極め、高品質なコンクリートを製造するための「羅針盤」のようなものです。この羅針盤を正しく読み解き、活用することで、安定した品質のコンクリートを製造し、信頼性の高い構造物を構築する礎となるのです。


粗粒率計算・管理におけるよくある疑問と注意点

粗粒率はコンクリート品質管理の強力なツールですが、その限界や注意点も理解しておくことで、より多角的で的確な判断が可能になります。

粗粒率だけに頼りすぎない多角的な評価の重要性

「たかが一つの数字、されど建物の未来を左右する」と粗粒率の重要性を語ってきましたが、実は粗粒率は粒度分布の全体像を完全に反映しているわけではありません。同じ粗粒率を示す骨材でも、粒度曲線の形状が大きく異なる場合があり、それがコンクリートのワーカビリティや強度に微妙な差をもたらすことがあります。

例えば、特定の粒径の骨材が極端に多い、あるいは少ない「空隙」を持つ粒度分布の場合、粗粒率の数値だけではその不均衡を見抜けないことがあります。このような場合、骨材の単位容積質量、実積率、あるいは目視による粒度分布の確認など、他の試験結果や評価方法と組み合わせることで、より正確な骨材の特性を把握することが重要です。粗粒率はあくまで「便利な代表値」として活用し、それに過度に依存しすぎず、多角的な視点から骨材の品質を評価する姿勢がプロには求められます。

現場での迅速な品質判断と化学混和剤の進化

粗粒率の測定は、ふるい分け試験から計算まで、ある程度の時間と手間を要します。そのため、コンクリートの打設現場で緊急を要する品質判断には不向きな場合があります。このような状況では、簡易的な目視検査や、コンクリートのフレッシュ性状(スランプ、空気量、塩化物量など)の測定結果を総合的に判断することが重要です。

また、「高性能化学混和剤の進化により、骨材の粒度分布の許容範囲はかつてよりも広がりつつあり、粗粒率の過度な厳密管理は、技術的な進化に逆行する可能性も指摘される」という逆張りの意見も存在します。確かに、高性能混和剤を適切に活用することで、骨材の粒度分布の多少の偏りをカバーし、必要なコンクリート性能を発現させることは可能です。しかし、これは粗粒率の管理が不要になったという意味ではありません。むしろ、混和剤の効果を最大限に引き出すためには、骨材の特性、ひいては粗粒率を正確に把握し、最適な配合設計を行うことがより重要になります。粗粒率という基礎的な指標を理解した上で、最新の技術を賢く組み合わせることが、現代のコンクリート技術者に求められるスキルと言えるでしょう。


まとめ:粗粒率をマスターし、高品質なコンクリートを追求しよう

この記事では、コンクリートの品質を決定づける重要な指標である「粗粒率」について、その意味、JIS規格に準拠した具体的な計算方法、そして算出された値の評価と配合設計への活用方法を詳しく解説してきました。

コンクリートの真価は、その「粒」に隠されています。粗粒率は、この見えない「粒のバランス」を数値化し、品質管理を可能にするコンクリート配合設計の羅針盤です。単に数字を算出するだけでなく、その意味を深く理解し、コンクリートの品質にどう影響するかを読み解く力が、プロフェッショナルには求められます。

今日からあなたも、ふるい分け試験のデータから粗粒率を計算し、その数字が語りかける骨材の特性を理解することで、コンクリートの品質管理を次のレベルへと引き上げてみませんか?この知識が、あなたが手掛ける構造物の安定性、耐久性、そして信頼性を大きく高める一歩となることを願っています。ぜひ、この学びを現場での実践に活かし、高品質なコンクリート構造物の創造に貢献してください。

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