呼び強度とは?
呼び強度とは実務的には生コンプラントへの発注強度です。
JISの生コン工場では、JIS規定による検査を行い、つまりJISに規定された方法で強度確認した結果この強度を保証します。
このJISで規定された試験方法とは、150m3に1回検査します。1回とは任意の1台の車から3つのピースを採取します。その3ピースの平均値で検査結果を判断します。
建築では構造強度の確認するための検査方法としてJASSで規定されている別の採取方法があります。これは、同じく1回は150m3に1回なのですが、任意の3台から1ピースずつとって、3ピースで1回とするのでその違いはあたまにいれておきましょう。

呼び強度の決め方
さて、呼び強度の決め方です。まずは、その前提として次の3つの強度が存在します。
1.品質管理強度 Fq
2.調合管理強度 Fm
3.調合強度F
これらの強度の関係は、F> Fm > Fq となります。呼び強度といわれるものは、厳密には意味合いは違いますが、実務的には、2の Fm とほぼ同じとなっていることが多いです。

さて、それでは一つ一つ細かく各強度の決め方を見ていきましょう。
︎1.品質管理強度 Fq の決め方
1.品質管理強度 Fqの前段階として、
0-1 設計基準強度 Fc
0-2 耐久設計基準強度 Fd
があります。
設計基準強度Fcは、設計者が設定するこの強度は、構造設計上必ず満たされなければならない数値。
耐久設計基準強度Fdは、建物の「計画供用期間」、つまり「想定耐用年数」のこと。
短期、標準、長期、超長期の4段階にわかれ、それぞれ、18 N/mm2 、24 N/mm2 、30 N/mm2 、36 N/mm2 に設定されている。この耐久設計基準強度は設計図にて設定されています。

0-1 設計基準強度 Fc
0-2 耐久設計基準強度 Fd
以上の2つの値のうち、高い方の数字を
1.品質管理強度 Fq とすることとなります。
︎2.調合管理強度 Fm
調合管理強度 Fmとは
Fm = Fq +mSn
mSn これは構造体強度補正値。
実際の構造体の強度が気温などにより試験体と違うことによる補正値。
mSn=3、mSn=6といった値が各エリアの気温などにより決められています。だいたいその地域の生コン会社に聞けば、地域ごとに決められた温度補正一覧表を手に入れることができます。8月の暑い時期や、1月の寒い時期に6となる地域が多いです。
<温度補正値表> 緒方生コン様HPより引用

︎ 3.調合強度F
調合強度F は、下記の式により算出されたものの大きい方を採用する。
F ≧Fm +1.73σ
F ≧0.85 Fm + 3σ
σ は、基本的には各工場の実績による標準偏差。この数値がない場合は、2.5 N/mm2 もしくは、0.1 × Fm のうちの大きい方を適用する。
︎調合強度F の設定式の意味
調合強度F の設定式の意味ですが、
F ≧ Fm +1.73σ は、Fm を下回る確率が5%以下
F ≧ 0.85 Fm + 3σ は、致命的な数値であるFmの85%以下の強度になる確率が、ほぼ0%
という意味があります。
■ F ≧ Fm +1.73σ は、Fm を下回る確率が5%以下
一つ目の式
F ≧ Fm +1.73σ
に関しては、下記の表をみていただくと理解がしやすいです。
過剰に強度を上げる配合をすると経済的にマイナスになるので統計的な観点から「強度がFmを下回る確率が5%以下であればよいでしょう」と設定しているのです。

1. バラつき(σ:標準偏差)の前提
現場で作る材料(特にコンクリートなど)は、同じ材料・同じ手順で作っても必ず品質に「バラつき」が出ます。このバラつきの大きさを表す数値がσ(シグマ) です。
2. 平均値を狙う危険性
もし、要求されているギリギリの強度(Fm)を目標(平均値)として作ってしまうと、上振れすることもあれば下振れすることもあるため、「2回に1回(50%)の確率で要求強度を下回ってしまう」という致命的な問題が起こります。
3. なぜ「1.73」という中途半端な数字なのか
不良率(要求強度を下回る確率)を実用上安全な「5%以下」に抑え込むためには、統計学の正規分布において平均値から 1.64σ 分の余裕を持たせる必要があります。
しかし、実際の現場におけるサンプリング数の限界や安全側のゆとりを見越して、1.64より少し大きい 1.73 という係数を採用しています。表にある通り、1.73 を掛けることで下回る確率は約4.2%となり、確実に「5%以下」という条件をクリアできるため、標準的なルールとして定着しています。
■ F ≧ 0.85 Fm + 3σ は、致命的な数値であるFmの85%以下の強度になる確率が、ほぼ0%
2つ目の式である、
F ≧ 0.85 Fm + 3σ
については次の表をみてください

1. なぜ「3σ」だと確率がほぼ0になるのか?
統計学(正規分布)において、データは平均値を中心にバラつきますが、そのバラつきの範囲には明確なルールがあります。
- 平均値 ± 1σ の範囲に入る確率:約 68.3%
- 平均値 ± 2σ の範囲に入る確率:約 95.4%
- 平均値 ± 3σ の範囲に入る確率:約 99.7%
つまり、目標強度から下に 3σ 分の距離をとった場合、そのラインを下回るデータは全体の残り 0.3% のさらに半分(下側だけ)になるため、約0.13%(1000回に1回強)という、実質的に「ほぼ発生しない(ほぼ0)」確率に抑え込むことができます。
2. なぜ「100%xFm」ではなく「85%xFm (0.85Fm)」をデッドラインにするのか?
前回の式(1.73σ)は「構造物全体としての平均的な強度が、基準強度(Fm)を5%の確率でしか下回らないようにする」ためのものでした。
しかし、現場では「たまたま採取した1個のテストピースの強度が局所的に低かった」という事態も起こり得ます。構造物は全体で力を負担するため、局所的に強度が15%程度落ち込んでも(85%になっても)ただちに建物が崩壊するわけではありません。
そこで、「構造物全体としての要求レベル(Fm)に対する5%のゆとり」とは別に、「局所的であっても絶対に割ってはいけない致命的なデッドライン(0.85Fm)に対する0.1%のゆとり」という、性質の違う2つの網を張ることで、多重に安全性を確保しています。
4.まとめ
以上のことから、実際の設計基準では、F = Fm + 1.73 σ と、F = 0.85Fm + 3σ の両方を計算し、より数値が大きくなる方(より安全な方)を最終的な目標配合強度として採用するというルールになっているのです。


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