1. 素朴な疑問
建設・土木業界で働くエンジニアの皆さん、コンクリート技士試験の勉強や日常業務の中で「調合強度」と「設計基準強度」の違いについて悩んだことはありませんか?実務では「設計基準強度さえ満たせばいいんじゃないか」と考えがちですが、実はコンクリートの品質管理において調合強度の正確な理解は非常に重要です。
忙しい現場や設計業務の合間に勉強する時間を確保するのは大変ですが、この記事ではコンクリート技士試験でよく出題される調合強度に関する問題を解説し、実務に直結する知識を効率よく身につけられるようにまとめました。品質管理の根幹となる知識ですので、ぜひ隙間時間を活用して理解を深めていきましょう。

忙しい現場人にも役立つ、コンクリートの調合強度の基礎知識をマスターしましょう!
2. コンクリート技士試験の類似問題
問題1: 下記のコンクリートの配合条件が与えられているとき、調合強度の算出方法として正しいものはどれか。
- 設計基準強度: 24 N/mm²
- 材齢28日における標準偏差: 3.0 N/mm²
- 合格判定基準: 1回の試験結果が設計基準強度の85%以上であること
(1) 24 + 1.0 × 3.0 = 27.0 N/mm²
(2) 24 + 1.73 × 3.0 = 29.2 N/mm²
(3) 24 ÷ 0.85 = 28.2 N/mm²
(4) 24 ÷ 0.85 + 1.73 × 3.0 = 33.4 N/mm²
問題2: JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に規定される呼び強度24のコンクリートの圧縮強度試験結果が以下の通りであった。このコンクリートの合否判定として正しいものはどれか。
試験結果: 22.0 N/mm², 25.5 N/mm², 24.5 N/mm²
(1) 合格。3回の試験結果の平均値が24.0 N/mm²以上で、かつ1回の試験結果が20.4 N/mm²以上であるため。
(2) 不合格。1回の試験結果が24.0 N/mm²未満であるため。
(3) 不合格。1回の試験結果が20.4 N/mm²(24 × 0.85)未満であるため。
(4) 合格。3回の試験結果の平均値が24.0 N/mm²以上であるため。

実際の試験ではこのような調合強度と品質管理に関する問題がよく出題されます!
3. 上記の問題の解答及び解説
問題1の解答: (4) 24 ÷ 0.85 + 1.73 × 3.0 = 33.4 N/mm²
解説:
調合強度の算出には、[ 以下の2つの要素 ]を考慮する必要があります:
- { 最低1回の試験値が基準値を下回る確率を考慮した割増し }: 設計基準強度÷0.85
- { 強度のばらつきを考慮した割増し }: 1.73×標準偏差
よって、
- まず合格判定基準から、1回の試験結果が24 × 0.85 = 20.4 N/mm²以上であることが求められる
- この条件を満たすために、設計基準強度を0.85で割った値(24 ÷ 0.85 = 28.2 N/mm²)を基準とする
- さらに、強度のばらつきを考慮して、1.73 × 標準偏差(1.73 × 3.0 = 5.2 N/mm²)を加える
- 最終的な調合強度は、28.2 + 5.2 = 33.4 N/mm²となる
問題2の解答: (1) 合格
解説:
JIS A 5308における強度の合格判定基準は以下の2つです:
- { 3回の試験結果の平均値が呼び強度以上であること }
- { 1回の試験結果が呼び強度の85%以上であること }
この場合:
- 3回の試験結果の平均値: (22.0 + 25.5 + 24.5) ÷ 3 = 24.0 N/mm² ≧ 24.0 N/mm²(条件1を満たす)
- 1回の最小試験結果: 22.0 N/mm² ≧ 24.0 × 0.85 = 20.4 N/mm²(条件2を満たす)
両方の条件を満たしているため合格と判定されます。

調合強度の算出と判定基準の適用方法を正確に理解することが重要です!
4. 覚えておくべきポイント
調合強度と設計基準強度の違い
- [ 設計基準強度(Fc)]: 構造物の設計時に基準となる強度
- [ 調合強度(Fm)]: 実際に配合設計する際の目標強度で、設計基準強度に安全率を加えたもの
調合強度の算出方法
調合強度(Fm)は次の式で算出されます:
Fm = Fc/0.85 + k × σ
ここで:
- Fc: 設計基準強度
- 0.85: 1回の試験結果が設計基準強度の85%以上という判定基準に基づく係数
- k: 正規分布における危険率に対応する係数(通常1.73を使用)
- σ: 標準偏差
品質管理における標準偏差の重要性
- { 標準偏差が小さい }: 品質管理が行き届いており、調合強度の割増し量が少なくて済む
- { 標準偏差が大きい }: 品質のばらつきが大きく、より大きな割増しが必要
JIS A 5308における合格判定基準
- 3回の試験結果の平均値が呼び強度以上
- 1回の試験結果が呼び強度の85%以上

調合強度は単に安全率を掛けるだけではなく、統計的な考え方に基づいて決定されます!
5. 関連知識
品質管理と統計的アプローチ
コンクリートの品質管理では[ 統計的手法 ]が重要です。標準偏差(σ)はコンクリート強度のばらつきを示す指標で、過去のデータから算出します。標準偏差が小さいほど品質管理が行き届いていることを意味し、結果的に調合強度を低く設定できるため、経済的な配合が可能になります。
管理図による品質管理
{ シューハート管理図 }を用いると、生産されるコンクリートの品質を視覚的に把握できます。管理図では以下の管理限界を設定します:
- 中心線(X̄): 管理目標値
- 上方管理限界(X̄ + 3σ): 上限値
- 下方管理限界(X̄ – 3σ): 下限値
- 内側限界(X̄ ± 2σ): 警戒ライン
管理図上の測定値が内側限界(±2σ)の範囲内にランダムに分布していれば、プロセスは安定していると判断できます。
調合強度と経済性の関係
調合強度を過度に高く設定すると、セメント量が増加し、コストが上昇するだけでなく、収縮やひび割れのリスクも高まります。一方、品質管理を徹底して標準偏差を小さくすることで、調合強度を適切に設定し、経済的かつ高品質なコンクリートを生産することができます。

統計的な品質管理の理解が、コスト削減と品質向上の両立につながります!
6. 復習問題とその解答
復習問題1: 設計基準強度36 N/mm²、標準偏差4.0 N/mm²のコンクリートの調合強度を求めよ。ただし、合格判定基準は1回の試験値が設計基準強度の85%以上を満たすこととする。
解答:
Fm = 36 ÷ 0.85 + 1.73 × 4.0
= 42.4 + 6.9 = 49.3 N/mm²
復習問題2: 呼び強度27のコンクリートの圧縮強度試験結果が以下の通りであった。このコンクリートの合否を判定せよ。
試験結果: 24.0 N/mm², 29.5 N/mm², 28.0 N/mm²
解答:
- 平均値: (24.0 + 29.5 + 28.0) ÷ 3 = 27.2 N/mm² ≧ 27.0 N/mm²(条件1を満たす)
- 最小値: 24.0 N/mm² ≧ 27.0 × 0.85 = 23.0 N/mm²(条件2を満たす)
よって、合格と判定される。

復習問題を解くことで、調合強度の計算方法と判定基準の適用が確実に身につきます!
7. まとめ
コンクリートの調合強度は単なる設計基準強度への安全率の上乗せではなく、統計的な考え方に基づいた重要な指標です。調合強度は以下の要素から決定されます:
- 設計基準強度を合格判定基準(0.85)で割った値
- 強度のばらつき(標準偏差)に基づく割増し
実務上、調合強度を適切に設定することは:
- 構造物の安全性確保
- 経済的な配合設計
- 品質管理の効率化
において非常に重要です。
また、品質管理を徹底して標準偏差を小さくすることは、調合強度の割増し量を減らし、経済性と品質の両立につながります。シューハート管理図などの統計的手法を活用し、日々の品質管理の精度を高めることが、高品質なコンクリート生産の鍵となります。
コンクリート技士試験では、この調合強度の考え方と計算方法、合格判定基準について確実に理解しておくことが大切です。

調合強度の正しい理解と運用が、高品質で経済的なコンクリート構造物の実現につながります!
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