コンクリートの調合強度の真の意味とは、結局、たとえばFC=24N/mm2の調合強度が、仮に例えば、36だとしても、その意味は全ての強度が、36を超えるという意味ではなく、ほとんど99%のものが、24を超える、そして、たまに20.4近いものがあるという意味ということです。
いままで、なんとなく、調合強度ってなんでそんなに高く設定するのだろうと、一級建築士である私でさえ、そのような思い違いをしていました。
結局のところ、最大の目的は、コンクリート試験において、「3つのピースの平均値が設計基準強度を超え、なおかつ、1つだけはたとえ設計基準を下回るようなことがあっても、設計基準強度の85%以上確保されていればよい、」ということであり、それを満たしていれば、「全体としてのコンクリート構造物は設計の品質が保たれている、」ということを保証するということ。
この本質を理解しておくことが重要だということを改めて今日の記事でまとめます。
調合強度の本質を理解する
調合強度の本当の意味
Fc=24N/mm²で調合強度が36N/mm²の場合の真の意味は:
[ 調合強度36N/mm²は「全ての強度が36を超える」という意味ではなく、「統計的に99%以上の確率で24N/mm²を満たす」ことを目指した値です ]
つまり:
- 実際に製造されるコンクリートの平均強度は36N/mm²程度になります
- 個々のコンクリートの強度は、その平均値を中心に分布します
- 一部のコンクリートは36N/mm²を下回りますが、それは正常なことです
- 重要なのは、ほぼすべて(99%以上)のコンクリートが設計基準強度24N/mm²を満たすことです
- そして、JISの判定基準である20.4N/mm²(24×0.85)を下回る確率が極めて低いことです

調合強度は「必ず達成すべき下限値」ではなく、「設計基準強度を確実に満たすための目標平均値」なのです
具体的なイメージ
調合強度36N/mm²のコンクリートの強度分布を模式的に表すと:
(平均値≒36N/mm²)
↓
********
** **
強度の ** **
発生頻度 * *
* *
* *
* *
* *
|______*___________________________|_____
24N/mm² 48N/mm²
(設計基準強度)
実際には:
- 一部のコンクリートは30N/mm²程度かもしれません(平均より低い)
- 一部のコンクリートは42N/mm²程度かもしれません(平均より高い)
- { 最も重要なのは、24N/mm²を下回る確率が統計的に1%程度しかないこと }
- さらに20.4N/mm²を下回る確率は、それよりもさらに低くなります
実務的な視点
実務上、この考え方には重要な意味があります:
- 合理的な品質保証:
- すべてのコンクリートが同じ強度であることは現実的に不可能です
- 統計的な考え方により、合理的な品質保証が可能になります
- 不良率の管理:
- 「不良」とは「設計基準強度を満たさないもの」であり、「調合強度を満たさないもの」ではありません
- 調合強度を適切に設定することで、不良率を適切な値(通常1%以下)に管理できます
- 経済性とのバランス:
- 調合強度を過度に高く設定すると、コストが上昇します
- 適切な統計的手法により、安全性と経済性のバランスが取れます

調合強度の設定は「絶対に下回ってはならない最低基準」ではなく、「統計的に設計基準強度を確保するための合理的な目標値」なのです
試験結果の評価方法
このような統計的な考え方は、試験結果の評価にも反映されています:
- JIS A 5308の判定基準:
- 3回の試験平均が呼び強度以上
- 1回の試験結果が呼び強度の85%以上
- 個々の試験値の解釈:
- 例えば、32N/mm², 36N/mm², 39N/mm²という試験結果が出たとしても
- 平均は約36N/mm²で調合強度に近いですが、個々の値はばらついています
- これは正常な状態であり、問題ではありません
このように、コンクリートの品質管理は「すべての値が一定」を目指すのではなく、「統計的にコントロールされたばらつき」を前提としています。
まとめ
- 調合強度36N/mm²は「すべてのコンクリートが36N/mm²以上」を意味しません
- 実際には36N/mm²前後の正規分布となります
- この設定により、ほぼすべてのコンクリートが24N/mm²を超え
- JISの判定基準である20.4N/mm²を下回る確率は極めて低くなります
この統計的な考え方がコンクリート技術の基本であり、これにより合理的かつ経済的な品質管理が可能になっています。

コンクリートの品質管理は「絶対値」ではなく「統計的な確率」で考えることが、信頼性と経済性を両立させる鍵なのです!
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