コンクリート技士試験において、セメントの規格に関する問題は毎年必ず出題される重要分野です。特にJIS R 5210(ポルトランドセメント)の規定は、実務でも頻繁に参照される基本的な知識となります。
ゼネコンや設計事務所、コンクリート関連の会社で忙しく働いている皆さんにとって、セメントの種類ごとの特性や規定値を正確に理解することは、現場での品質管理や設計において非常に重要です。今回は、JIS R 5210の規定について、過去問を通じて詳しく解説していきます。一緒に確実な知識を身につけて、コンクリート技士試験合格を目指しましょう!
2. コンクリート技士試験の類似問題
問題:JIS R 5210に基づくセメントに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 普通ポルトランドセメントでは、質量で5%までの少量混合成分を用いてもよいことが規定されている。
(2) 早強ポルトランドセメントでは、普通ポルトランドセメントよりも比表面積の下限値が大きく規定されている。
(3) 中庸熱ポルトランドセメントでは、けい酸二カルシウム(C₂S)の上限値が規定されている。
(4) 低熱ポルトランドセメントでは、材齢91日の圧縮強さの下限値が規定されている。
3. 上記の問題の解答及び解説
正解:(3)
各選択肢について詳しく解説します:
(1) 普通ポルトランドセメントの少量混合成分 正しい記述です。JIS R 5210では、普通ポルトランドセメントに質量で5%以下の少量混合成分(石灰石、高炉スラグなど)を添加することが認められています。これにより、製造時の品質安定化やワーカビリティーの改善が図られています。
(2) 早強ポルトランドセメントの比表面積 正しい記述です。早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントよりも比表面積の下限値が大きく設定されています。比表面積が大きいほど水和反応が促進され、早期強度の発現が可能となります。
(3) 中庸熱ポルトランドセメントの規定 誤った記述です。中庸熱ポルトランドセメントでは、けい酸三カルシウム(C₃S)の上限値が規定されており、けい酸二カルシウム(C₂S)の上限値は規定されていません。C₃Sは反応性が高く発熱量も大きいため、その含有量を制限することで水和熱を抑制しています。
(4) 低熱ポルトランドセメントの圧縮強さ 正しい記述です。低熱ポルトランドセメントは水和反応が緩やかなため、材齢91日の長期強度で品質管理を行うことが規定されています。

■中庸熱セメントはC₃Sの上限値が規定されており、C₂Sではない点がポイント
4. 覚えておくべきポイント
セメント種類別の特徴と規定
- 普通ポルトランドセメント:一般的な用途に使用、5%以下の少量混合成分添加可能
- 早強ポルトランドセメント:比表面積が大きく設定され、早期強度発現が特徴
- 中庸熱ポルトランドセメント:C₃S含有量を制限し、水和熱を抑制
- 低熱ポルトランドセメント:材齢91日での強度管理、マスコンクリートに適用
比表面積の重要性 比表面積とは、セメント1gあたりの表面積を表す指標で、単位はcm²/gです。比表面積が大きいほど水和反応が活発になり、強度発現が早くなりますが、水和熱も大きくなります。

■セメントの種類によって比表面積や化学成分の規定が異なることを理解する
5. 関連知識
セメントの化学成分と特性
- C₃S(けい酸三カルシウム):初期強度発現に寄与、水和熱が大きい
- C₂S(けい酸二カルシウム):長期強度発現に寄与、水和熱が小さい
- C₃A(アルミン酸三カルシウム):凝結時間に影響、硫酸塩に敏感
- C₄AF(鉄アルミン酸四カルシウム):硬化体の色調に影響
特殊セメントの用途
- 中庸熱セメント:ダム、橋脚などの中程度のマスコンクリート
- 低熱セメント:大型ダム、厚いマットスラブなどの大きなマスコンクリート
- 早強セメント:プレキャスト製品、緊急工事、寒中コンクリート
混合セメントとの関係 JIS R 5211(高炉セメント)、JIS R 5213(フライアッシュセメント)など、混合セメントとポルトランドセメントの違いも合わせて理解しておくことが重要です。

■セメントの化学成分と用途の関係を体系的に理解することが実務でも重要
6. 復習問題とその解答
問題:セメントの比表面積に関する次の記述のうち、適当でないものを選べ。
- 比表面積が大きいほど、初期強度の発現が早くなる
- 早強ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメントより比表面積が大きい
- 比表面積の測定はブレーン法で行われる
- 比表面積が大きいほど、水和熱は小さくなる
解答:(4)
比表面積が大きいほど水和反応が活発になるため、水和熱は大きくなります。選択肢(4)の記述は逆の関係を述べているため不適当です。
- 正しい:表面積が大きいと水和反応が促進され、初期強度が向上
- 正しい:早強セメントの特徴として比表面積の下限値が大きく設定
- 正しい:JIS R 5201でブレーン空気透過法が規定されている

■比表面積と水和反応速度、水和熱は正比例の関係にある
7. まとめ
セメントの規格に関する問題は、JIS R 5210の正確な理解が必要です。特に各セメント種類の特徴的な規定値や化学成分の制限について、以下のポイントを押さえておきましょう:
重要事項の整理
- 普通ポルトランドセメント:5%以下の少量混合成分添加可能
- 早強ポルトランドセメント:比表面積の下限値が大きい
- 中庸熱ポルトランドセメント:C₃Sの上限値を規定(C₂Sではない)
- 低熱ポルトランドセメント:材齢91日の圧縮強さで管理
これらの知識は、コンクリート技士試験合格のためだけでなく、実際の現場でのセメント選定や品質管理においても重要な基礎知識となります。各セメントの特性を理解し、用途に応じた適切な選択ができるよう、しっかりと覚えておきましょう。

■セメント規格の理解は試験合格と実務の両方で重要な基礎知識
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