こんにちは、コンクリート技士試験の受験生の皆さん。 今回は、フライアッシュの特徴と効果について解説します。 フライアッシュは、石炭火力発電所から発生する副産物で、コンクリートの混和材料として広く利用されています。 火力発電所では、2021年度時点の資料で、液化天然ガス(LNG=Liquefied Natural gas)によるものが約45%、そして石炭によるものが42%あるのです。まだまだ日本においては石炭火力発電所は存在し、それによってフライアッシュも生成されています。アシュとは英語でash 。つまり灰を表します。
そして実は、火力発電所における石炭の灰はその大きさにより3種類あり、下の図のとおり、一番大きいものがクリンカアシュといわれ、炉の底に融解したあと固まったもの。そしてその次に大きいものがシンダアシュとよばれ、英語で記載するとBottom ash と記載され、つまり、これも炉の下部に堆積したものを指します。そして、一番小さなフライアシュは高温の燃焼空気中を浮遊していたものがボイラ出口付近で冷やされ球形微細粒子になったもの。これを電気集塵機で集塵されたものでコンクリートの混和材として使用されています。
<九州電力HPより引用 https://www.kyuden.co.jp/ >
クリンカアシュ、シンダアシュ(ボトムアシュ)、フライアシュの特性を表形式にまとめると次の通りです。
特性 | クリンカアシュ | シンダアシュ (ボトムアシュ) | フライアシュ |
---|---|---|---|
大きさ | 6.4mm以上 | 0.6mm~6.4mm | 主に75μm未満(0.075mm未満) |
形成場所 | 燃焼炉の底部 | 燃焼室の底部や壁面 | 煙突から排出 |
形状 | 大きな塊、溶融して固まっている | 粒状 | 微細な粉末状 |
最大サイズ | 10-20cm程度の塊も | 6.4mm程度 | 100μm程度(0.1mm程度) |
最小サイズ | 約6.4mm | 約0.6mm | 1μm以下も |
主な用途 | 建設資材 | 道路建設、埋め立て材 | コンクリート混和材、土壌改良剤 |
このように、フライアシュとは火力発電で石炭を燃焼させた際の副産物です。あくまでも副産物のためこれにかかわるCO2 の発生はすくなくおもに輸送の際に発生するCO2 だけがカウントされます。セメント1t使用する際、CO2が760㎏ 発生するのですが、フライアシュ1t使用する際に発生するCO2はたったの20㎏しか発生しません。
こうした背景があり、セメントをフライアシュで置換するとCO2の発生が抑えられ、結果的に環境にやさしい材料ということになるのです。試験勉強と仕事の両立は大変かもしれませんが、こうした内容を理解することで、 コンクリートの性能向上に役立つ知識と試験対策の知識が身につきます。一緒に頑張りましょう!
フライアッシュの特徴と効果 コンクリート技士試験の類似問題
問題:フライアッシュをコンクリートに使用した場合の効果として、適切でないものを選べ。
- 長期強度の増進
- 水和熱の低減
- 乾燥収縮の増大
- 水密性の向上
フライアッシュの特徴と効果 問題の解答及び解説
正解は3です。 フライアッシュを使用すると、ポゾラン反応によって長期的な強度増進が期待できます。 また、水和熱の低減や水密性の向上にも効果があります。 一方で、フライアッシュの使用により乾燥収縮が増大することはありません。むしろ、乾燥収縮を抑制する効果が期待できます。
フライアシュは、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)を主成分とするため、水が存在すると下記の反応が起こります。
ポゾラン反応式の例
Ca(OH)2+[ SiO2 ,Al2O3]
→ nCaO・SiO2・H2O(ケイ酸カルシウム水和物)
3CaO・Al2O3・6H2O(アルミン酸カルシウム水和物)
このポゾラン反応がゆっくりと進むこと、そして、この水和物が緻密な組織を形成することから長期の強度増進がおこり、なおかつ緻密性により水硬性がたかまります。また、このポゾラン反応による発熱はセメントによる水和熱よりも小さいので水和熱低減の効果も発生します。
フライアッシュの特徴と効果 覚えておくべきポイント
- フライアッシュは、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)を主成分とする
- ポゾラン反応により、長期的な強度増進と水密性の向上が期待できる
- フライアッシュの置換率が高いほど、初期強度発現性が低下する
- フライアッシュの使用により、コンクリートの流動性が改善される
フライアッシュは、セメントにくらべると粒子の形がまるく球状となっておりボールベアリング効果をもちます。そのため、流動性が高く、作業性、つまりワーカビリチーが高まります。こうしたフライアッシュの特性を理解し、適切な置換率で使用することが重要となります。
<カーボンフロンティア機構HPより引用 https://www.jcoal.or.jp/ashdb/whatash/flyash.html >
フライアッシュの特徴と効果 関連知識
JIS A 6201では、フライアッシュを I 種、II 種、III 種、IV 種に区分
JIS A 6201に基づくフライアッシュの区分を表にまとめます。各種の主な要求性能と共に数値を示します:
項目 | I種 | II種 | III種 | IV種 |
---|---|---|---|---|
二酸化けい素(SiO2)(%) | 45.0以上 | 45.0以上 | 45.0以上 | 45.0以上 |
強熱減量(%) | 3.0以下 | 5.0以下 | 8.0以下 | 5.0以下 |
湿分(%) | 1.0以下 | 1.0以下 | 1.0以下 | 1.0以下 |
密度(g/cm³) | 1.95以上 | 1.95以上 | 1.95以上 | 1.95以上 |
粉末度(cm²/g) | 5000以上 | 2500以上 | 2500以上 | 1500以上 |
フロー値比(%) | 105以上 | 95以上 | 85以上 | 75以上 |
活性度指数(材齢28日,%) | 90以上 | 80以上 | 80以上 | 60以上 |
活性度指数(材齢91日,%) | 100以上 | 90以上 | 90以上 | 70以上 |
注意点:
- I種が最も高品質で、IV種に向かうにつれて要求性能が緩和されています。
- 全種類で二酸化けい素(SiO2)の含有量は45.0%以上が要求されています。
- 強熱減量はI種が最も厳しく、III種が最も緩和されています。
- 粉末度はI種が最も高く、IV種が最も低くなっています。
- 活性度指数は、I種が最も高く、IV種が最も低くなっています。
*活性度指数とは??
活性度指数について説明します:
計算方法: 活性度指数 (%) = (フライアッシュ混合モルタルの圧縮強度 / 普通ポルトランドセメントモルタルの圧縮強度) × 100
定義: 活性度指数とは、フライアッシュのポゾラン活性を評価するための指標です。具体的には、フライアッシュを混合したモルタルの圧縮強度を、フライアッシュを含まない普通ポルトランドセメントのみのモルタルの圧縮強度と比較した値です。
フライアッシュセメントは、フライアッシュを5〜30%混合したセメント
次はフライアッシュセメントの種類を表にまとめます。JIS R 5213(フライアッシュセメント)に基づいて説明します:
種類 | フライアッシュ混合量 (質量%) | 特徴 |
---|---|---|
フライアッシュセメントA種 | 5を超え10以下 | - 普通ポルトランドセメントに近い性質 - 初期強度が比較的高い |
フライアッシュセメントB種 | 10を超え20以下 | - 中庸的な性質 - バランスの取れた強度発現 |
フライアッシュセメントC種 | 20を超え30以下 | - 長期強度の増進が顕著 - 水和熱が低い |
補足事項:
混合するフライアッシュ:
- JIS A 6201に適合するもの
- 主にII種またはIII種フライアッシュが使用される
用途:
- A種:一般的な建築・土木構造物
- B種:マスコンクリートや耐久性が要求される構造物
- C種:ダムなどの大型マスコンクリート
特性:
- フライアッシュの混合量が増えるほど、初期強度は低下するが長期強度は増進
- 水和熱の低減効果が高まる
- ワーカビリティの向上
環境面:
- セメント製造時のCO2排出量削減に寄与
- 産業副産物の有効利用
フライアッシュは、アルカリシリカ反応の抑制効果もある
フライアッシュのアルカリシリカ反応(ASR)抑制効果について、わかりやすく説明します。
アルカリシリカ反応(ASR)とは:
- コンクリート中の反応性骨材(シリカを含む)とセメントのアルカリ成分が反応
- 膨張性のゲルを生成し、コンクリートにひび割れや劣化を引き起こす問題
フライアッシュによるASR抑制のメカニズム:
a) アルカリの希釈効果:
- フライアッシュがセメントの一部を置換全体のアルカリ量が減少し、反応の可能性が低下
- フライアッシュがセメントの水酸化カルシウムと反応アルカリを含む安定な化合物(C-S-H)を形成し、遊離アルカリを減少
- フライアッシュの微細粒子がコンクリートの組織を緻密化アルカリや水の移動を抑制し、反応を遅延
効果の具体例:
- フライアッシュを15-25%程度混合することで、ASRによる膨張を大幅に抑制可能
- 長期的な耐久性の向上
注意点:
- フライアッシュの品質や使用量が重要
- すべての種類のASRに対して同等の効果があるわけではない
メリット:
- コンクリートの耐久性向上
- 補修コストの削減
- 構造物の長寿命化
簡単に言えば、フライアッシュは「コンクリートの中でアルカリシリカ反応の原因となる成分を減らし、反応が起こりにくい環境を作る」ことでASRを抑制します。これは、道路、橋、ダムなどの重要なインフラの長期的な安全性と耐久性を向上させる上で非常に重要です。
フライアッシュ中の未燃炭素量が多いと、AE剤の効果が低減する
はい、フライアッシュ中の未燃炭素量とAE剤(空気連行剤)の効果の関係について、わかりやすく説明します。
未燃炭素とは:
- 石炭が完全に燃焼せずにフライアッシュ中に残った炭素粒子
- 通常、強熱減量(LOI)で測定される
AE剤(空気連行剤)とは:
- コンクリート中に微細な空気泡を導入する混和剤
- 凍結融解抵抗性の向上や、ワーカビリティの改善に使用
未燃炭素が多いとAE剤の効果が低減する理由:
a) 吸着作用:
- 未燃炭素は表面積が大きく、吸着性が高いAE剤を吸着し、本来の機能を果たせなくする
未燃炭素がAE剤を吸収することで、有効なAE剤の量が減少
結果として、必要な空気量を得るためにより多くのAE剤が必要になる
具体的な影響:
- コンクリート中の空気量が設計値より少なくなる
- 凍結融解抵抗性が低下する可能性
- コンクリートの品質管理が難しくなる
対策:
- 未燃炭素量(強熱減量)の少ないフライアッシュを使用
- AE剤の使用量を増やす(ただし、過剰な使用は強度低下の原因になる可能性)
- フライアッシュの使用量を調整
- カーボンの吸着を受けにくい特殊なAE剤を使用
実務上の注意点:
- フライアッシュの品質管理(特に強熱減量)が重要
- コンクリートの空気量を頻繁にチェックする必要がある
簡単に言えば、「フライアッシュ中の未燃炭素がAE剤を吸い取ってしまい、AE剤が本来の役割を果たせなくなる」ということです。これは、コンクリートの品質管理において重要な考慮事項となります。
フライアッシュの特徴と効果 復習問題
問題:フライアッシュを使用したコンクリートの特徴として、適切なものを選べ。
- ブリーディングが増加する
- 単位水量が増加する
- ポンプ圧送性が向上する
- 凍結融解抵抗性が低下する
フライアッシュの特徴と効果 まとめ
フライアッシュは、コンクリートの長期強度増進や水密性向上、水和熱低減などの効果が期待できる混和材料です。 一方で、初期強度発現性の低下や未燃炭素量の影響などにも注意が必要です。
フライアッシュの特性を理解し、適切な置換率で使用することで、 所要の性能を満たすコンクリートを得ることができます。その他混和材料を使用した混和セメントをまだ、学んでいなければこちらも見ておきましょう ⇒ セメントとは?