6-1. コンクリート技士試験 過去問 配合設計の基本的な考え方

6. 配合設計

こんにちは、コンクリート技士試験の受験生の皆さん。

今回は、コンクリートの配合設計の基本的な考え方について解説します。 配合設計は、所要の品質を満足するコンクリートを経済的に製造するために重要な作業です。

日本のゼネコンにいると生コンというと配合を頼めばお金さえ払えば手に入ります。だけど、海外に行くとたまに、現場で練って作成しているのを目の当たりにします。時には自分たちでセメント、砕石、砂、水を購入して混ぜ合わせることすら出てきます。

そういったことを考えると、ただの試験勉強ではなく、生きた知識として考えていきましょう。ちなみに、次の動画のように、セメント+砂利+砂+水でコンクリートはできあがります。

配合設計の基本的な考え方 コンクリート技士試験の類似問題

問題:コンクリートの配合設計において、最初に決定する項目として適切なものを選べ。

  1. 水セメント比
  2. 単位水量
  3. 細骨材率
  4. 単位セメント量

ちなみに、配合例は下記の通り。

配合設計の基本的な考え方 問題の解答及び解説

正解は2です。

コンクリートの配合設計では、最初に単位水量を決定します。 単位水量は、コンクリートのワーカビリティーに大きな影響を与える要因であり、 所要のスランプを得るために必要な水量を設定します。

建築仕様書などで、185kg/m3以下と規定されることが多いので、これは、例えば上記の表のように、175㎏/m3と考えればよいです。

次に、水セメント比を決定します。 水セメント比は、コンクリートの強度や耐久性に関係する重要な指標です。 所要の品質を満足するように、水セメント比を設定します。 単位セメント量は、単位水量と水セメント比から計算されます。

W/C、ダブリューバイシーと一般的には言ってます。たいてい目安として、50%から60%程度のイメージです。

重量比なので、例えば W/Cが50%ならば、水が、175kg 混ぜる場合、セメントは 175kg÷50%=350㎏ となり、1m3のコンクリートをつくるのにセメントが25㎏袋だと、14袋必要になります。

ちなみに、w/c が 60%近いと、FC=18N/㎡くらいで、50%くらいだと、FC=24N/㎡くらいは出るのかなというイメージです。

ちなみに、FC=45N/㎡くらいの強度を出そうと思うと、水は160KG/㎥~170kg/㎥ と水分量が少なくなり、なおかつW/Cは35%から40%、つまり、セメント量が400㎏/㎥から450kg/㎥ 程度となります

これは25㎏のセメント袋が17袋前後必要ということです。ちなみに、ネットで調べるとセメントは一袋659円でした。つまり1m3のコンクリートをつくるのに、17袋使ったら、それだけで、11,203円/㎥ するということです。配合設計って、強度が出ればいいってだけではないことをこの金額を頭に入れて覚えておきましょう。

こうなってくると、水が少なくなって、セメント量が増えてますよね。。。何が起こるか想像できますか? 

そうです。ワーカビリティが悪くなります。だから、高性能AE減水剤が必要になるのです。

高性能AE減水剤のAEとは air entrained を意味する英語の略でつまり、微細な空気をコンクリート中に連行する化学剤です。これを入れることにより、入れない場合は空気量が1%くらいなのですが、4.5%くらいにまであがり、打設しやすいコンクリートとなるのです。

微細な空気がコンクリートに混ざることでボールベアリング効果、つまり空気がコンクリートに入り込むことで全体がなめらかになるのです。

ちなみに、この空気を連行するのは、日本だと地震国でもあり、高層ビルであることも多いので、高い強度が必要です。だから、水の量を少なくしてセメントの量を増やさなければいけない事情があります。

なので、実はそれほど強度を必要としない他の国の工事では、空気量は1%程度で管理されていることもあったり、そもそも、空気量の測定すらしないこともあります。日本の基準がすべてだと思っていたら、足元をすくわれるので注意しましょう。

これは、まずは、空気を連行することで凍結融解作用によるコンクリート強度の低下を防ぐ意味があることに起因します。

日本のように寒い時期に、氷点下以下になるような地域では、コンクリートの中の水分が凍結し、いったん8パーセント程度、かさが増え、そのあと凍結融解すると何も緩衝部分がないとコンクリートの強度に影響を与えます。

これを防ぐために、日本においては、コンクリートの中に微細な空気を送り込み、この空気を凍結時の緩衝材としているのです。連行された空気の粒が、コンクリート中の水分が凍った時の体積増加分を吸収するのです。

これも日本が冬に氷点下になることがあるから、このようなことを考えているだけで、外国の地で、氷点下以下にならない場合だったら、何ら必要のないことなのです。

もう一つ、空気連行の理由としてワーカビリティの向上がありますが、日本ほど強度を必要しない国の場合、もしくは、日本ほど数多くの配筋を要求されていない場合は、スランプ11程度で、なおかつ空気量が1%程度でも、細かい配筋がないので、打設時に困ることはありませんし、そもそも強度が高くないのでセメント量が少なく、あの高強度コンクリートのような粘りのある感じにはならないのです。

このようなことも知っていると、より深くコンクリートを理解できると思います。日本の一部の方は、なんでもかんでも日本の仕様がいいと思っている方がいますが、本質的なところをよく考えておかないと、不必要なことをやってしまう可能性があることを知っておいてほしいと思います。

実は、こうしたことはコストに大変響くので、いまコンクリート技士を勉強されている方は、ぜひ、こうしたことも押さえておいて、実戦では合理的な配合計画をしてほしいと思います。

さて、W/Cの決定で話が長引いてしまいましたが、コンクリートの配合設計において、W/Cを決定した後は、最後に、細骨材率を決定し、単位骨材量を計算します。

細骨材率とは、骨材全体に対する細骨材の割合を容積比で表したものです。W/Cが重量比だったので、ここで、細骨材率は容積比であることには注意をしましょう。

細骨材率(%) = 細骨材容積 ÷ (細骨材容積 + 粗骨材容積)× 100

細骨材率を先ほどの表のデータで計算すると:

  • 細骨材の絶対容量:295 l/m³
  • 粗骨材の絶対容量:374 l/m³
  • 細骨材率:295 ÷ (295 + 374) × 100 = 44.1%

なお、細骨材率の特徴としては次のような点があります。テストでもよく出るポイントなので、しっかり覚えておきましょう。

1.細骨材率の一般的な範囲

  • 普通コンクリート:40-45%程度
  • 貧配合の場合:35-40%程度
  • 富配合の場合:45-50%程度

2.細骨材率が高すぎる場合:

  • 単位水量が増える
  • 乾燥収縮が大きくなる
  • ひび割れが発生しやすい

3.細骨材率が低すぎる場合:

  • 材料分離しやすい
  • ワーカビリティが悪くなる
  • ジャンカが発生しやすい

4.影響する要因:

  • スランプ値
  • 粗骨材の最大寸法
  • セメント量
  • 施工条件

適切な細骨材率を選定することで:

良好なワーカビリティ

適切な強度

耐久性の確保 が可能になります。

[st-kaiwa3] 配合設計では、単位水量、水セメント比、単位セメント量、細骨材率の順に決定することが基本 [/st-kaiwa3]

配合設計の基本的な考え方 覚えておくべきポイント

  • 配合設計は、所要の品質を満足し、経済的なコンクリートを製造するために重要
  • 単位水量は、コンクリートのワーカビリティーを左右する要因
  • 水セメント比は、コンクリートの強度や耐久性に影響を与える指標
  • 細骨材率は、コンクリートの材料分離抵抗性やポンパビリティーに関係する

配合設計では、コンクリートに要求される性能を適切に設定し、各材料の役割を理解することが重要

配合設計の基本的な考え方 関連知識

  • 配合設計は、土木学会「コンクリート標準示方書」や日本建築学会「JASS 5」に基づいて行われる
  • 配合設計には、AE剤や高性能減水剤などの混和剤の使用も考慮される
  • フライアッシュや高炉スラグ微粉末などの混和材を用いる場合、置換率の設定が重要
  • 配合設計の結果は、試し練りによって検証され、必要に応じて修正される

配合設計の基本的な考え方 復習問題

問題:コンクリートの配合設計において、単位水量を増加させた場合の影響として、適切なものを選べ。

  1. スランプが増加する
  2. 圧縮強度が増加する
  3. 乾燥収縮が減少する
  4. 単位セメント量が減少する

[st-kaiwa3]正解は1です。 コンクリートの配合設計において、単位水量を増加させると、以下のような影響が生じます。

  1. スランプが増加する:単位水量が増加すると、コンクリートの流動性が向上し、スランプが増加する
  2. 圧縮強度が減少する:単位水量の増加は、水セメント比の増加を意味し、圧縮強度は低下する傾向にある
  3. 乾燥収縮が増加する:単位水量が増加すると、コンクリート中の水分量が多くなり、乾燥収縮が大きくなる傾向にある
  4. 単位セメント量が増加する:単位水量の増加に伴い、所定の水セメント比を維持するために、単位セメント量も増加する

[/st-kaiwa3]

配合設計の基本的な考え方 まとめ

コンクリートの配合設計は、所要の品質を満足し、経済的なコンクリートを製造するために重要な作業です。

配合設計では、単位水量、水セメント比、単位セメント量、細骨材率の順に決定するのが基本です。 各材料の役割を理解し、要求される性能に応じて適切に設定することが求められます。

また、混和剤や混和材の使用、試し練りによる検証など、様々な要因を考慮する必要があります。 配合設計の基本的な考え方を身につけ、品質の高いコンクリートを経済的に製造することが重要です。

[st-kaiwa3] 配合設計の基本的な考え方を理解し、要求される性能に応じて適切に設定することがコンクリートの品質確保に重要 [/st-kaiwa3]

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