調合強度の計算における分母「0.85」の意味を考える。なぜ設計基準強度を0.85で割り戻すのか?

6. 配合設計

設計強度と調合強度の関係性を再考する

「設計強度が24N/mm²の場合、調合強度は20.4÷0.85でよいのではないか」という疑問に至りました。なぜなら3つの試験ピースのうち1つが設計基準度の85%を超えていて、なおかつ平均値が設計強度を超えていればいいということがあるからです。

調合強度の考え方の基本

調合強度の計算において、設計基準強度Fcを0.85で割る理由を明確にしましょう:

  1. 合格判定基準の要件:
    • JIS A 5308では「1回の試験結果が呼び強度(設計基準強度)の85%以上」という条件があります
    • つまり最低でも24×0.85=20.4N/mm²以上必要です
  2. 目標とすべき平均強度の考え方 :
    • 20.4N/mm²が「下限値」であり、実際のコンクリートの平均強度はこれよりも高く設定する必要があります
    • 20.4N/mm²は合格の最低限であり、これを目標に配合設計するのではなく、設計基準強度(24N/mm²)自体を確実に満たすよう設計します

なぜ「24÷0.85」なのか

重要なポイントは「Fc÷0.85」の意味です:

  • 仮に平均強度を「20.4÷0.85」とすると、平均値は約24N/mm²となります
  • これでは全体の約50%が24N/mm²未満となり、設計基準強度を満たさない確率が高くなります
  • そこで「24÷0.85≒28.2N/mm²」を基準とすることで、ほとんどのケースで設計基準強度を確保できます

つまり「24÷0.85」とするのは:

  • 設計基準強度(24N/mm²)を「平均値として」ではなく「下限値として」確保するための考え方です 
  • これにより、1回の試験値が20.4N/mm²を下回る確率を極めて低くできます

調合強度は「最低限の強度」を目指すのではなく、「設計基準強度を下回るリスク」を最小化するための値なのです!

具体例で考える

もし平均強度を24N/mm²に設定した場合:

  • 正規分布では、測定値の約50%が24N/mm²を下回ります
  • この場合、20.4N/mm²(24×0.85)を下回る確率も決して低くありません

一方、平均強度を28.2N/mm²(24÷0.85)に設定した場合:

  • 24N/mm²を下回る確率は大幅に減少します
  • さらに標準偏差(σ)を考慮して「28.2 + 1.73σ」とすることで、20.4N/mm²を下回る確率は統計的に非常に小さくなります

まとめ

「20.4÷0.85」ではなく「24÷0.85」を使う理由は:

  1. 20.4N/mm²は「不合格にならない最低限の値」であり、目標とする値ではない
  2. 設計基準強度(24N/mm²)自体を確実に確保するための計算である
  3. 統計的なばらつきを考慮しても、ほとんどのコンクリートが設計基準強度を満たすようにするため

調合強度の計算は「最低基準をギリギリ満たす」発想ではなく、「十分な安全率を持って設計基準強度を確保する」発想に基づいています!

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