呼び強度は、設計基準強度と同じで良いと思いますが、違うのはなぜだろうか? ふとそんなことをおもったので、今回はこの点を深堀します。
なぜ二つの用語が存在するのか
呼び強度と設計基準強度は確かに混同されやすい概念ですが、その背景には重要な理由があります。
呼び強度と設計基準強度の基本的な関係
まず、基本的な関係を確認しましょう:
通常は:
呼び強度 = 設計基準強度
の関係が成り立ちます。では、なぜ異なる用語が必要なのでしょうか?

呼び強度と設計基準強度は、同じ数値を指すことが多いですが、異なる目的と背景を持つ概念です
なぜ別々の用語が必要なのか
二つの用語が存在する理由は、 それぞれが異なる技術体系と規格に属しているから です:
- 規格体系の違い:
- 呼び強度: JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に定められた生コン製品としての品質規格
- 設計基準強度: 建築基準法や土木学会コンクリート標準示方書などの構造設計基準で定義される設計値
- 対象とする範囲の違い:
- 呼び強度: 工場から出荷される「製品としてのコンクリート」の品質規格
- 設計基準強度: 「構造物の一部となったコンクリート」の設計上の強度
- 責任主体の違い:
- 呼び強度: 生コン製造者(工場)の責任範囲
- 設計基準強度: 設計者の責任範囲

呼呼び強度と設計基準強度は、それぞれ「生コン製造」と「構造設計」という異なる業界の橋渡しをする概念なのです
具体的な違いが生じる場合
通常は同じ値ですが、以下のような場合に違いが生じることがあります:
- 特殊な構造物の場合:
- 一部の特殊な構造物では、JIS規格にない強度が設計基準強度として指定されることがあります
- この場合、最も近いJIS規格の呼び強度を選択し、特記仕様書で詳細を指定します
- 長期強度を考慮する場合:
- 設計基準強度が材齢91日などの長期強度で指定される場合があります
- この場合、JIS A 5308の呼び強度(通常は材齢28日)とは異なる値となります
- 特殊な環境条件の場合:
- 海洋構造物など特殊な環境では、強度以外の要件(耐久性など)から設計基準強度より高い呼び強度が指定されることがあります
呼び強度の表記方法
呼び強度の表記はJIS A 5308で標準化されています:
普通 24 - 8 - 20 N
| | | | |
| | | | +-- セメントの種類(N=普通ポルトランド)
| | | +----- 粗骨材の最大寸法(mm)
| | +--------- スランプ(cm)
| +------------- 呼び強度(N/mm²)
+----------------- コンクリートの種類
一方、設計基準強度は通常「Fc=24N/mm²」のように表記されます。

呼び強度は「製品としての規格」、設計基準強度は「設計上の特性値」という違いがあります
呼び強度と設計基準強度の連携の重要性
二つの概念が存在することには、実務上の重要な意味があります:
- 品質保証の連続性:
- 設計→発注→製造→施工→検査という流れの中で、一貫した品質基準を維持できます
- 責任分界点の明確化:
- 生コン製造者の責任範囲と設計者・施工者の責任範囲を明確に区分できます
- 専門分野間のコミュニケーション:
- 構造設計者と生コン製造者という異なる専門家が共通の言語で品質について議論できます
実務上の注意点
実務において、この二つの概念を扱う際の注意点:
- 仕様書での明確な指定:
- 工事仕様書では「設計基準強度」と「呼び強度」を明確に区別して記載すべきです
- 長期強度の考慮:
- 設計基準強度が長期強度の場合、その旨を明記し、材齢28日での強度も参考値として示すことが望ましいです
- 特殊仕様の明確化:
- JIS規格外の強度を要求する場合は、調合に関する詳細な指示を仕様書に盛り込む必要があります

呼び強度と設計基準強度の違いを理解することは、コンクリート構造物の品質確保において非常に重要です!強度は「設計上の特性値」という違いがあります
まとめ
呼び強度と設計基準強度は、以下の理由で異なる用語として存在しています:
- それぞれが生コン製造と構造設計という異なる技術体系に属している
- 製品規格と設計値という異なる目的を持っている
- 異なる責任主体に関わる概念である
通常は同じ数値を指すことが多いですが、この二つの概念を区別することで、コンクリート構造物の品質確保における責任の所在と品質保証の連続性が明確になります。このような体系的な区分けは、建設業界特有の分業体制と品質管理システムを支える重要な基盤となっています。

呼び強度と設計基準強度の区別は、コンクリート産業の品質保証システムを支える重要な概念的基盤なのです!
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