*文章に不備があったので2025年12月28日追記修正しています。
呼び強度と設計基準強度は何が違う?実務で混同しないための徹底解説
「設計基準強度と同じ数値で発注すれば良いのでは?」と思われがちですが、実はここにはコンクリート工学の重要なルールが隠されています。なぜ2つの用語を使い分ける必要があるのか、その本質を深掘りします。
1. 結論:なぜ2つの用語が存在するのか
一言で言えば、「構造計算上の目標値(設計基準強度)」と、「工場に注文する製品のスペック(呼び強度)」という役割の違いがあるからです。
- 設計基準強度 (Fc): 構造計算の前提となる強度。構造物が安全であるために必要な「最低限の強度」です。
- 呼び強度: JIS A 5308(生コン規格)に基づき、工場に発注する際の「商品名」です。材齢28日での強度を保証します。
2. 最大の違いは「温度補正 (S値)」にある
実務において「呼び強度 = 設計基準強度」とならない最大の理由は、気温による強度発現の遅れを考慮するからです。
コンクリートは生き物です。寒い時期は硬化が遅いため、現場の構造体で設計通りの強度を確保するには、あらかじめ工場で強度を高めに調合して出荷してもらう必要があります。
呼び強度 = 設計基準強度 (Fc) + 構造体強度補正値 (S)
※S値は、予想平均気温に応じて一般的に 3 N/mm2 や 6 N/mm2 が加算されます。
3. 具体的な違いが生じる3つのケース
「数値が異なる」のは、主に以下の理由によります。
| 項目 | 内容 |
| 温度補正 (S) | 季節(気温)による強度発現の差を補うため。冬場は特に高くなります。 |
| 耐久性計算強度 (Fd) | 構造計算上は低くても、中性化抑制などの「耐久性」の観点から、より高い強度が要求される場合。 |
| JIS規格の「刻み」 | Fc=21.5 のような端数の設計値に対し、JISの呼び強度は「21, 24, 27」と3刻みが基本のため、切り上げて発注します。 |
4. 呼び強度の表記方法(JIS A 5308)
呼び強度は、生コン工場の品質保証の基準です。
普通 - 24 - 8 - 20 N
- 普通: コンクリートの種類
- 24: 呼び強度(24 N/mm2。これが工場が保証する数値)
- 8: スランプ(流動性 cm)
- 20: 粗骨材の最大寸法 (mm)
- N: セメントの種類(普通ポルトランド等)
5. 実務上の責任分界点
この2つの用語を分けることで、建設プロセスにおける責任が明確になります。
- 設計者の責任: 構造計算に基づき、必要な設計基準強度 (Fc)を決定する。
- 施工者の責任: 気温や工期を考慮し、適切な補正値を加えて呼び強度を算出し、発注する。
- 製造者(生コン工場)の責任: 指定された呼び強度の規格を100%満足する製品を出荷する。
【コンクリート技士 試験問題例】
問題:
呼び強度 24(スランプ 12cm、粗骨材の最大寸法 20mm)のレディーミクストコンクリートを、同一の配合で連続して製造している工場から購入した。
次の表は、ある日に納入されたコンクリートから採取した、A・Bの各ロット(1ロット3個の供試体で構成)に対する圧縮強度試験の結果(材齢28日)である。
JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」の強度判定規定に基づき、各ロットの合否判定の組み合わせとして、正しいものはどれか。
| ロット | 1回目の強度 (N/mm2) | 2回目の強度 (N/mm2) | 3回目の強度 (N/mm2) |
| ロットA | 29.1 | 22.5 | 21.6 |
| ロットB | 30.0 | 20.2 | 26.9 |
(1)A:合格、B:合格
(2)A:合格、B:不合格
(3)A:不合格、B:合格
(4)A:不合格、B:不合格
【解答と専門家による詳細解説】
正解:(2)
JIS A 5308における「圧縮強度の検査(合否判定)」には、以下の2つの基準を同時に満たす必要があります。
1. JIS A 5308 の判定基準
- 3回の試験結果の平均値が、購入者が指定した呼び強度の数値以上であること。
- 今回の条件:平均値 ≧ 24.0 N/mm2
- 1回の試験結果が、購入者が指定した呼び強度の数値の85%以上であること。
- 今回の条件:24 x 0.85 = 20.4 N/mm2 以上
2. 各ロットの検証
- ロットAの判定
- 平均値:(29.1 + 22.5 + 21.6) ÷ 3 = 24.4 N/mm2→ 基準(24.0 以上)をクリア
- 個別の値:最小値は 21.6 x N/mm2→ 基準(20.4 以上)をクリア
- 判定:合格
- ロットBの判定
- 平均値:(30.0 + 20.2 + 26.9) ÷ 3 = 25.7 N/mm2→ 基準(24.0 以上)をクリア
- 個別の値:2回目の結果が 20.2 N/mm2→ 基準(20.4 以上)を下回っているため不合格
- 判定:不合格
3. 専門家のアドバイス:ここがポイント
この問題の肝は、「平均値が良くても、一つでも極端に低い値があれば不合格になる」という品質管理の厳格さを理解しているかどうかです。
また、実務上の「呼び強度」と「設計基準強度」の議論に関連付けると、以下のようになります。
- この試験は「工場が約束した強度(呼び強度)の製品を正しく作ったか」を確認するものです。
- もし冬場に「温度補正 S=6」を行って、設計基準強度 Fc=18 に対して 呼び強度 24 で発注していた場合、工場の合格ラインはあくまで 「24」 となります。
- 「設計基準強度の18は超えているから、ロットBも実用的には問題ないのでは?」と考えるのは、JIS製品検査(呼び強度判定)においては間違いです。「発注したスペック(呼び強度)をJISのルール通り満たしているか」が全てです。
ただし、だからといって「不合格=即構造体をすべて壊してやりなおし」とはならず、現地のコンクリートをコア抜きして強度試験したり、シュミットハンマーで検査したりして検証するということも覚えておいて下さい。
まとめ
- 設計基準強度は、構造物の安全を担保する「理論上の最低ライン」。
- 呼び強度は、現場環境(気温など)を加味して工場に注文する「実務上のスペック」。
- 「呼び強度 = 設計基準強度 + 温度補正」 を原則として理解することが、強度不足トラブルを防ぐ鍵です。
技術者である以上、ばらつきについても理解を深めておくべきだと思います。このばらつきの概念を頭に置いておかないと、ただ、ただ、余裕を持ったコンクリートを作ることに一生懸命になってしまい、世界で戦えない強度は高いけど、コストも高いコンクリートしか作れない技術者になってしまいます。
呼び強度の考え方で併せて理解しておきたい品質管理のおけるばらつきとは?
>>品質管理におけるばらつきとは?



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